大学恩師からの最後の年賀状

20年以上送られてきている大学恩師からの年賀状は毎年変わらない構成だったが、今年は一目見ただけで違っていた。手書きが一切無く、全てが印刷であった。90歳を間近にして息子さんの家に同居するようになり、また年末に入院手術をしたと記されている。そして、来春以降の年賀の挨拶は遠慮させていただく言葉が綴られている。

先生は都市計画が専門で、図学も教えられていた。とても厳しい先生で、無駄話はもちろん、肘を机について授業を聴くような態度も許さなかった。大学4年になるとき、恐る恐るこの先生に指導を受けて卒業研究をすることを友人と選んだ。ところが、同じ指導を受ける数名だけの授業で驚いたのは、友人が授業中居眠りをしているのに怒らないのだ。担当する生徒へ甘いというよりも、前日徹夜したんだろうなあと気遣うような優しさを感じた。私と卒業研究でペアを組んだその友人がしっかりやらないのもとがめること無く、私には人の出来不出来を受け入れる寛容さが必要だと話されたのを覚えている。そういえば、この数名の担当した生徒への卒業祝いは貝原益軒の「養生訓」であった。
とてもしっかりした考え方ができる方として尊敬できる恩師です。この年賀状での宣言もとてもかっこいい、とてもすばらしい行いだと感心してしまった。

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