ショートショート 『最後のポケット』(眉村 卓)

眉村 卓さんの100編あまりが入った短編小説集『最後のポケット』(眉村 卓)
ウィットやアイロニーに富んだ作品ばかりで、それぞれ2ページ程度と本当にショートショートなのでそれぞれはあっという間に読むことができる。
昭和60年に発行されたものだけど、スマートフォンの定着を揶揄するような「電話人」や、いきすぎたテレワークの世界「自由時間制」、あるいは終身雇用が死語となり腰掛けのように転職する時代を皮肉ったような「転勤先」とか、現代のサラリーマンが読むと真面目に考えてしまうような作品もある。「ブランド世界」「安全対策」「お返しの日」なんかは一般的な生活で起こりそうなことを皮肉っている。個人的に好きなのは、はるか先の未来で忘れ去られた人類の文明や滅亡した人類そのものを題材にした「復元委員会」「古き良き時代」みたいなのが好きかな。「最終回」とか「あとがき」なんていう短編が最後に並ぶのも楽しい。
「あとがき」の後の“あとがき”を読むと、大阪でやっていたラジオの企画でこれらのショートショートを書いていたらしい。こういう物語はさくっとだれでも書けそうで書けないのが凡人なんだろうなあ。眉村 卓さんすごい。

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