『タイムマシンのつくり方』(広瀬 正)

広瀬正さんのタイムトラベル系の短編を集めた本である。
この本を購入してまず驚いたのは解説の長さだ。筒井康隆さんが書いてるのだけれど25ページもある。こんな長い解説を見たことはない。
本を読み終え解説を読んで理由が分かった。広瀬正さんは47才の若さで亡くなったが昭和のSF黎明期に筒井康隆さんなどと同時代にあった広瀬正さんは結構苦労もしていたようだ。特に広瀬正さんがテーマとしていたのがタイムトラベルもので、かなりこだわっていたとのこと。本書の最後に小説ではないので付録として「『時の門』を開く」という一編が添えられている。ロバート・A・ハインラインの『時の門』を分析したものだがそのすごさに小松左京さんが推薦しているのはこの本が広瀬正さんの回顧録のようなものでもあるのかと思う。
作品のなかでは、『化石の街』が面白かった。時間の進み方が遅い街に迷い込んでしまった主人公。逆に言うと主人公の時間が恐ろしく速く進んでいたので…というようなお話。
『オン・ザ・ダブル』も主人公とその他の世界の時間の進み方が違ったらどうなるかという話だけど、こちらは科学の実験で意図的に時計の進み方を変えてみたらその人の行動も変わるのではないかというもので、もしかしてありえるかもと感じてしまう。
『異聞風来山人』は平賀源内は実はタイムトラベルしていた、というお話で、解説によると当時のSF作家たちのあいだで平賀源内について未来から来た人間じゃないかと言う話題があったそうだ。
『二重人格』も面白い。平行宇宙がある拍子に一人の人間を接点に混線してしまい…という物語。舞台設定なんかも面白いので映像になったら楽しそうだ。
『鷹の子』はSFではなくホラー。母親の子に対する愛情の怖さかな。
『あるスキャンダル』はロボットもの。どんどんこの物語りが現実に近づいていて面白い。
筒井康隆さんの解説を読むだけでも価値ある昭和SF タイムトラベルものの一冊だと思います。

"タイムマシンのつくり方 (集英社文庫)" (広瀬 正)

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