『神の鉄槌』(アーサー・C・ クラーク)

火星と木星の間には数十万二ものぼる小惑星が存在する。小惑星同士の衝突などによって軌道が変わり地球に接近または衝突する危険性はある。
2013年にロシアに落ちた隕石のことは生々しい映像とあいまって強烈な印象を残しているが、メキシコ・ユカタン半島に落ちた隕石によって恐竜が絶滅したことを考えれば、いつなんどき同じような天文的な事故によって人類の存亡を危うくすることが起こっても不思議ではない。
この小説はそういう問題を再提起するような物語だが、アーサー・C・ クラークがこれを書いたのは1993年というもう20年以上も前のこと。22世紀を舞台にしたこの小説では地球に脅威となる小惑星の軌道を変える手段が用意されていて、“カーリー”と名付けられた小惑星に対策を施すのだが・・・
SF小説では舞台設定も気になるところで、寿命が伸びた22世紀の主人公 ロバート・シンは、70才を過ぎており、宇宙船“ゴライアス”の船長を務めている。そのロバート・シンは、月で行われたオリンピックの第一回マラソンの優勝者。人類は月や火星などに移住している。火星では環境を変えようとしており、地衣類の緑は広がりつつある。エウロパにはまだ生命は見つかっていない。月の裏側で強烈な電磁波を放射したら、それから約9年後にシリウス方向から電波が届いた。などなど、サイドストーリーもそれぞれまとまった小説になりそうで面白い。

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